Vol.20「なぜエトランジェなのか」(演出家)

1.題名

「異邦人」と書いて「エトランジェ」と題した。
エトランゼ【etranger】:見知らぬ人。よそ者。外国から来た者。
久保田早紀の「子供たちは~♪」のあれではないの?
という疑問に答えなければならない実情。
歌の方が有名とは、仕方ない、情けない。

2.国

主人公ムルソーを日本名に置き換えて無留僧(ムルソウ)と名乗れば、
葬儀や最終場面は司祭ではなく住職になるのか?
冒頭の「今日、ママンが死んだ…」という周知の台詞を
「今日、母さん (母ちゃん・おかん・母上)が死んだ…」と翻訳するのか?
そんな勇気、私にはない。
「お芝居なんだから…」をお約束に、
アルジェリア(旧フランス領)の土地を演ずる方が
観客のため、自身の身のためだろうと。

3.想像力

私はいつもダブルイメージを演出の基本としている。
原作のもつ空気感(シチュエーション・時代性・各人物像)がこの作品 の水脈であるから、
そこからテキストレジを始め、想像力に託すことにした。
原作を忠実に裏切ること。
どうやら遊びすぎる傾向がある。
あとはお客様の想像力が勝ることを信じて。

4.裁判

後半は公判のシーンが広範を占める。
昔から映画や小説の法廷シーンを好み息詰まされた。
「12人の怒れる男」「評決」「ニュルンベルク裁判」「白と黒のナイフ」「告発」…。
マクベインやグリシャムの小説も好きだった。
現在の日本の「裁判員裁判」とは異なる「陪審員制度」。
タイムリーだと意識しつつも、法廷は「フランスの名の下に」をこの作品では選びたい。

5.不条理と実存

この言葉、避けては通れない。…らしい。
サルトル…ボーヴォワール…ドツボにはまりそうである。
稽古場でも着地点がいまだみつからない。

「作品は作品になろうとする」をモットーに、実は放ったらかしにしている。

ある友人が「エトランジェ」って「その他」って意味ですか?
それは「エトセトラ」でしょ?
独立の「et(エ)」は英語で言う「and」の意。
接頭の「et-」は、元来「他」を意味する語である。

「エトランジェ」と「エトセトラ」
誤解もあながち間違いではないと、へんに納得。そんなタイトルである。

演出家