愚鈍起承転浪漫譚「ムーヴメント」と「モチーフ」

「ムーヴメント」とシンクロナイズでは総称して言う。
場面の核となる動きだったり、絵だったり、ミザンス(バランス)だったりを、
稽古の始まりにデザインする「モチーフ」の集合体。
自分の発想を試しつつ、俳優たちに作品の方向性を示すイメージづくりの最初である。


今回は「風車」と「巨人(化け物)」から始めた。
ドン・キショーテといえばコレ、基本である。

「風車」の動きのモチーフは役者が発明したものだ。
私は立ち位置とリズムとタイミングを的確に判断すればいいのだ。

演出者の仕事は、やりたいことをはっきりと言うこと。
「風を起こしたい」「坂道を登りたい」
と、意志を明確に伝えればいいのである。
あとは役者ならびにスタッフが実現する。


「渋面の男が、騎士道物語を本を読み耽っている。一人ポツンと漂流しているかのように。」

台本にそう書かれている。
「漂流」に引っ掛かる。あらゆる手を使って何度も試す。
結局、ドン・キショーテの心が漂流しているんだと気付き、
早川の演技にお任せするのが得策だと気付く。
モチーフづくりは「ありなし」「善し悪し」の判断がつくのだ。

 

「彼の一挙手一投足が世界観を多重に構築し、呼吸を始める。」

ならば原作のドレの絵のようなモチーフをつくりたいと考えた。
役者は原作の絵を観察し、鏡に向かい、立体化していく。
「モチーフ」とは、テキストを立体化し、
二次元の世界を三次元に組み立てる作業なのだ。

このような工程を延々と何度も何度も繰り返し繰り返す。


「馬は馬に見えなくてもいい。」

が、馬であることにこだわりたい。
乗馬もしたい。
嘶きも足音も必要だ。
試行錯誤の結果、
人間味のある「馬」がこの作品に必要だということが判る。
ドン・キショーテやサンチョと対等に肩を並べる主役級の馬。
張の遊び心と馬に対する愛情に託した。満足だった。
「モチーフ」によりテキストレジも見えてくる。


「手製の鎧甲、槍と盾」

これも役者がさまざまなガラクタを持ち寄った。
同志であり親友の牟田圭吾君が稽古場見学に現れて、
缶ビールの鎧を設計してくれた。
彼のアイデアと試作品はお見事だった。
バケツ、物干し竿、自転車リーム、デッキブラシなど、
発想が芝居を豊かに積み上げた。


このような「モチーフ」が、
連結し、相乗し、紡がれ、「ムーヴメント」となり芝居の主題となる。

「ムーヴメント」とは、飛んだり跳ねたりのダンスではなく、
連鎖し運動する「表現」のことなのだ。

オープニングムーヴメントは、こうやって創られた。

久次米健太郎