Vol.32 それが問題だ

「お芝居だって思えばなんだってできる」
演劇の教え。
これを馬鹿みたいに信じてこれまでやってきました。

実は、この言葉の手前にはもう一つ言葉が隠れています。
「要は、やりたいかどうか、それが問題だ。」
これは、自分でも気づいていない心の奥の声、本心。

やりたきゃ、やればいい。
やりたくなきゃ、やらなければいい。
両手の秤にかけて量っているうちは見つからない、手を放して、真直ぐ立って、上を見上げた時に初めてわかる「本心」。

本日の稽古では、小っちゃな大女優が、
おかあちゃん女優から引っぺがされ、
照明家のお父ちゃんの背中にくくりつけられました。
早くも、親離れ子離れの儀式。

キ~っとひと声泣き叫んだあと、稽古中だから声を出さないように歯を食いしばって泣いています。
そりゃそうです。
これまでの稽古で一緒に舞台に立ち、自由に動き、買い物袋を持って一緒に登場し、合唱し、セリフを真似、ドレスを着て衣装合わせまでしたのですから。
しばらくすると、広い背中の向こう側から目に涙をいっぱいためて、こっちを睨みつけています。
その目の先は、お母ちゃんではなく、舞台。

私は、その目を見てフラッシュバック。
あんな風に私も舞台を客席から睨みつけていた頃。
自分がその舞台に立っているイメージしか持てなかった。

「舞台やりたい」

自分が子どもの頃を思い出しました。
今回の稽古に参加した彼女は、早くも3歳の本心をみつけたようです。
みんなと一緒にセリフを叫ぶ彼女は、いのちいっぱい生きています。

素晴らしい舞台になりそうです。

水谷純子